スポーツファーマシストの実践を世界へ|FIP World Congress 2026で研究発表

2026年8月30日から9月2日まで、カナダ・モントリオールで開催された「FIP World Congress of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences 2026」に参加し、これまで取り組んできたスポーツファーマシスト活動の一つである、スポーツの価値を基盤とした医薬品適正使用教育についてポスター発表を行いました。

FIP(International Pharmaceutical Federation:国際薬剤師・薬学連合)は、世界の薬剤師・薬学関係者が集まる国際組織です。今回のCongressには、116カ国から3,455人が参加し、過去最多の登録者数となりました。

普段は静岡県島田市の薬局を拠点に、スポーツファーマシストとしてアンチ・ドーピングをはじめ、アスリート支援や子どもたちへの医薬品教育など、「スポーツ×薬学」をテーマに活動しています。

今回は、そうした地域での実践から生まれた教育プログラムをインドネシアで実施し、その教育効果を定量的に評価した研究を、世界の薬剤師・薬学関係者が集まる場で発表する機会となりました。

開催地のモントリオールは、歴史ある旧市街と近代的な街並みが共存する魅力的な街。フランス語が飛び交う街を歩くだけでも、日本とはまた違った雰囲気を楽しむことができました。

地域での実践からインドネシアへ

今回発表したのは、2026年1月にインドネシア・バリ島の小学校で実施した、子どもたちを対象とする医薬品適正使用教育です。

このプログラムの特徴は、単に薬の知識を伝えるだけでなく、スポーツが持つ「フェアプレー」「ルールを守る」「自分や仲間の健康を守る」といった価値を、薬の正しい使い方や健康について考えることにつなげている点です。

「ドーピング妖怪」を活用した講話、お薬実験、カードゲーム「ドーピングガーディアン」などを組み合わせ、子どもたちが楽しみながら薬や健康について考える体験型のプログラムとして実施しました。

今回はプログラムの実施前後に調査を行い、医薬品に関する知識などの変化を数値で比較することで、教育効果を定量的に評価しました。

FIPでは、

Education on the Appropriate Use of Medicines through Game-Based Learning Grounded in Sporting Values: Learning Outcomes in Elementary Schools in Indonesia

という演題で、その実践と学習成果について報告しました。

また、今回FIPで発表した研究のアブストラクトは学会誌「Pharmacy Education」に掲載される予定です。

地域で取り組んできたスポーツファーマシスト活動の一つが、大学やさまざまな関係者との連携によって海外での教育実践へと広がり、今回、一つの研究成果として国際的な場で報告することができました。

10カ国以上の薬剤師へ活動を発信

国際学会でのポスター発表ということで、説明も質疑応答も英語です。

慣れない英語での発表なので、とてもうまくできたとは言えません。それでも発表時間を通じて、10カ国以上、約20名の薬剤師・薬学関係者に研究内容や日本でのスポーツファーマシスト活動について直接紹介することができました。

特にうれしかったのは、カードゲームやキャラクターを活用した教育手法について、薬剤師による活動としてのクリエイティブさを評価していただけたことです。

また、日本の薬剤師がスポーツファーマシストとしてアンチ・ドーピングに関わるだけでなく、アスリート支援や医薬品適正使用、地域での健康教育などにも取り組んでいることを興味深く聞いてくださる方もいました。

国や薬剤師を取り巻く環境が違っても、スポーツやアスリートの健康を支えることに関心を持つ薬剤師は多く、さまざまな国の方と意見を交わすことができました。

緊張しましたが、それ以上に楽しい発表となり、スポーツファーマシストという専門性を生かした活動には、まだまだ広げられる可能性があると改めて感じました。

 

SFTアクション+での実践からFIPへ

今回発表したインドネシアでのお薬教室は、Sport for Tomorrow Consortium(SFTC)の「SFTアクション+」として実施したプロジェクトです。

静岡県立大学薬学部、大阪産業大学、インドネシアの学校・現地関係者など、多くの皆様と連携しながら実施しました。

日本で開発してきた「ドーピング妖怪」や「ドーピングガーディアン」を海外の教育現場で活用し、現地の子どもたちと実践しました。

振り返ってみると、最初から国際学会での研究発表を目指して始めた活動ではありません。

地域でのお薬教室やアンチ・ドーピング活動、アスリートとの連携など、一つひとつの実践を積み重ねてきた先にインドネシアでの活動があり、今回のFIPへとつながりました。

島田市の薬局で始まった取り組みが、さまざまな方との連携によって海を越え、世界の薬剤師に紹介できるところまで広がったことは、今回のFIP参加で特に感慨深く感じたことの一つです。

実践を研究につなげ、研究を次の実践へ

今回のFIP参加を通じて改めて感じたのは、スポーツと薬学を組み合わせた活動には、アンチ・ドーピングだけにとどまらない可能性があるということです。

医薬品の適正使用、セルフメディケーション、健康教育、薬物乱用防止、そしてアスリートの健康やコンディションを支えること。

スポーツを入り口にすることで、薬剤師の専門性をさまざまな形で社会へ届けることができます。

そして、これから大切にしていきたいのが、地域で生まれた実践について、その成果を客観的に捉え、次の活動につなげていくことです。

地域の薬局だからこそ生まれるアイデアや実践があります。一方で、大学などと連携しながらその成果を研究として検討することで、活動をさらに発展させることもできます。

実践から研究へ、そして研究からまた次の実践へ。

この循環をつくりながら、スポーツファーマシスト活動をさらに発展させていきたいと考えています。

地域での実践を世界へ。そして世界での経験を地域へ

海外で発表すること自体がゴールではありません。

今回、世界各国の薬剤師と交流して得た視点やアイデアを、これから島田市をはじめとした地域でのお薬教室やスポーツファーマシー活動にも還元していきたいと思います。

地域での実践を世界へ。
そして、世界で得た経験をまた地域へ。

これからもスポーツファーマシストとして、地域での実践と研究・発信を積み重ねながら、「スポーツ×薬学」の可能性を広げていきたいと思います。

今回のプロジェクト実施から研究・発表までご協力いただいた静岡県立大学薬学部、大阪産業大学、インドネシアの学校・現地関係者の皆様、Sport for Tomorrow Consortium(SFTC)、一般社団法人ドーピング0会をはじめ、関係するすべての皆様に改めて御礼申し上げます。

こぼれ話:FIP史上最年少ランナー!?

今回のFIPには、研究発表とは別に、ちょっとしたうれしい出来事もありました。

実は今回、息子も一緒にモントリオールへ行き、Congress期間中に開催された「FIP Fun Run」に親子で参加しました。

世界各国から集まった参加者と一緒に、モントリオールの街並みを楽しみながら5kmを走るイベントです。

FIP公式Instagramによると、参加したCongress delegatesは146名。

そして後日、FIPの公式Instagramを見てびっくり。

親子で走っている写真が掲載され、息子がなんと「FIP Congress史上最年少のランナー(the youngest runner in congress history)」として紹介されていました。

まさか親子で参加したランイベントがFIP公式に取り上げられるとは思っておらず、ポスター発表とはまた違った意味で、今回のモントリオールでの大切な思い出になりました。

国際学会というと、研究発表や講演という少し堅いイメージもありますが、世界各国の薬剤師と一緒に走ったり、交流したりできるのも現地参加の楽しさの一つ。

私だけでなく、息子にとっても忘れられないFIPになったのではないかと思います。

 

講演・研修・体験会のご依頼について

みどりや薬局では、薬剤師会、スポーツ団体、教育機関、行政機関、企業研修などを対象に、講演・研修・体験型イベントのご依頼を随時受け付けています。

アンチ・ドーピング講座、スポーツファーマシスト活動に関する講演、ドーピングガーディアン体験会、子ども向けのお薬教室、スポーツの価値を活かした医薬品適正使用教育など、目的や対象に合わせて内容を調整いたします。

「地域で薬剤師の職能を活かしたい」
「スポーツチーム向けにアンチ・ドーピング研修を実施したい」
「子どもたちに薬の正しい使い方を楽しく伝えたい」
「ドーピングガーディアンを体験してみたい」

といったご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

講演、執筆、研修、イベント企画など、内容に応じて対応いたします。

 

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