12月7日、愛知県で開催された 第58回東海薬剤師学術大会 にて、口頭発表の機会をいただきました。
発表テーマは、今年8月に島田市の学童保育で実施した「ドーピング妖怪お薬教室」についてです。
このプログラムは、静岡県立大学薬学部臨床薬剤学講座の皆さんとともに企画し、
静岡県内の登録スポーツファーマシー、さらに近隣県のスポーツファーマシスト有志の皆さまの協力を得て実施しました。
地域の薬局、大学、そして専門職が垣根を越えて関わった点が、この取り組みの大きな特徴です。

スポーツファーマシー制度と、現場での実践
今回の発表では、新たに始まった「スポーツファーマシー」制度とともに、
スポーツの力を活かして地域の健康を支えるスポーツファーマシストの新しい役割について紹介しました。
とくに意識したのは、「薬局×大学」の連携にとどまらず、
「薬局×薬局」「地域×専門職」といった横のつながりを通じて、地域に価値を届けるという視点です。
こうした形でスポーツファーマシーの機能を具体的な教育プログラムとして展開している事例は、
日本国内ではまだ多くないと感じています。
低年齢層への薬教育という課題
発表の中では、大麻やオーバードーズをはじめ、
日常に潜む医薬品・薬物・食品によるリスクについても触れました。
これらのテーマは社会的な関心が高まっている一方で、
低年齢層を対象とした体系的な教育の機会は、決して十分とは言えません。
今回の「ドーピング妖怪お薬教室」は、
そうした課題に向き合うための“入り口”をつくる試みでもありました。

知識よりも、その先にある「ウェルビーイング」
もちろん、正しい知識を伝えることは重要です。
しかし、それ以上に大切にしたいのは、
教育を受ける子どもたち一人ひとりのウェルビーイングにつながっているかどうかだと考えています。
スポーツが持つ前向きな力に、
キャラクターコンテンツやカードゲームといったエンターテインメント性を掛け合わせる。
そのうえで、薬学的な裏付けをしっかり担保しながら、
「楽しい」「またやりたい」と感じられる学びとして届ける。
このバランスこそが、これからの薬教育に必要なのではないかと感じています。
学会参加を通じて感じた、これからの視点
今回の学術大会では、来年名古屋で開催されるアジアパラ競技大会に関連したシンポジウムにも参加しました。
競技スポーツと社会、地域、医療専門職がどのように関わっていくのか。
その議論は、スポーツファーマシストとしての自分の立ち位置をあらためて考えるきっかけになりました。
競技を支えるだけでなく、
スポーツを通じて社会課題に向き合い、地域に還元していく。
その中で、薬学の専門性をどう活かせるのか。
まだ答えは一つではありませんが、「できることは確実にある」と感じています。
感謝と、これから
最後になりますが、
セッションを担当してくださった座長の鈴木先生、
学会を主催してくださった 愛知県薬剤師会 の皆さま、
そして共同研究者である静岡県立大学薬学部臨床薬剤学分野の辻先生・内野先生に、心より御礼申し上げます。
今回の発表と学会参加を通じて得た気づきを、
次はまた現場へ。
スポーツファーマシー、そしてスポーツファーマシストとして、
地域とともに歩む実践をこれからも重ねていきたいと思います。


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