【活動報告】令和7年度SFTアクションプラス(第二期)採択事業|インドネシア・バリ島で体験型お薬教室を実施しました(2026年1月)

2026年1月、令和7年度SFTアクションプラス(第二期)採択事業として、インドネシア・バリ島にて事業を実施しました。
子ども向けのスポーツの価値を基盤とした体験型お薬教室(講話+実験+ドーピングガーディアン体験)をプログラムを、私立小学校(High Scope Bali)と公立小学校(SDN 22 Dauh Puri)の2校で実施しています。

また、学校での授業に加え、PMI Provinsi Bali(赤十字インドネシア)を訪問し、災害部門の見学と意見交換を行いました。さらに、在デンパサール日本国総領事館にて総領事と面会し、事業報告と意見交換を実施しました。

本プログラムは授業前後でプレテスト/ポストテストを実施し、教育効果を検証する設計としています。結果の整理・評価は静岡県立大学薬学部が担当し、得られた知見は教材・進行の改善に反映していきます。


■ 今回の実施概要

  • 1月19日:私立小学校 High Scope Bali にて授業実施(体験型お薬教室)

  • 1月20日:PMI Provinsi Bali(赤十字インドネシア)訪問(災害部門の見学・意見交換)

  • 1月22日:公立小学校 SDN 22 Dauh Puri にて授業実施(体験型お薬教室)

  • 1月22日:在デンパサール日本国総領事館にて総領事と面会(事業報告・意見交換)

私立・公立という異なる教育環境で同一の枠組みを運用し、現地での適合性や運営の再現性を確かめることも、今回の目的のひとつでした。


■ SFTアクション+事業として取り組んでいること

この採択事業で取り組んでいるのは、海外の学校で単発の授業を行うことではなく、学校現場で運用できる形にプログラムを整え、実施し、検証し、改善していくことです。

子どもたちの生活には、薬・サプリメント・飲料など、健康に関わる選択が日常的に存在します。一方で、自己判断での服用量変更、家族や他人の薬の使用、飲み合わせの誤解といった行動は、健康リスクに直結します。
ここで着目しているのが、アンチドーピングの現場で問題になる「うっかりドーピング」との共通点です。アスリートも子どもも、悪意があるわけではなく、意図せず誤った薬の使い方をしてしまうことがあります。つまり、必要なのは「知っているかどうか」だけではなく、日常の場面で正しい判断につながる学びの設計です。

そこで本事業では、普段トップアスリートに対して実施しているアンチドーピング教育の枠組みをベースにしながら、子どもたちの医薬品適正使用啓発に適した形へと内容を改良し、体験型プログラムとして実装しています。スポーツが持つ「ルール」「公正」「自己管理」といった価値を学びの土台に置き、薬の正しい使い方を“知識”ではなく“行動”として身につける構成(講話+実験+DG体験)にしています。

今回の教育プログラムは、インドネシア向けに新しく作ったものではなく、日本国内でも同様の内容で実証実験を継続しているプログラムです。国内で繰り返し改善してきた枠組みを、海外の学校現場に持ち込み、私立・公立という異なる環境で運用しました。
言語や文化、授業環境が異なる中でも「講話+実験+DG体験」という構成で学びと対話の場を成立させられたことは、国内で進めている実証の妥当性と再現性を補強する結果となりました。
ここで得られた所見は、国内の実証にもフィードバックし、内容の精度をさらに上げていきます。


■ 静岡県立大学薬学部と薬学生の協力

今回の授業は、静岡県立大学薬学部の協力があって成立しています。
現地で一緒に動いてくれた薬学生も、準備・実験の段取り・DG体験の進行・子どもたちとのコミュニケーションまで、幅広い場面で力を発揮してくれました。

現地では想定外が普通に起こります。予定通りに進まない中で、その場で考えて役割を取りにいく。言葉が完全には通じない状況でも、表情や反応を見ながら距離を詰めていく。
その動きが、授業全体の質を底上げしてくれたと感じています。薬学生にとっても、学校での教育実践や国際的な現場対応は、実習だけでは得にくい経験です。今回の経験が、次につながっていくことを期待しています。


■ 体験型お薬教室の内容(講話+実験+DG体験)

授業は、次の流れで実施しました。

① 講話(ミニレクチャー)

子どもたちが日常でつまずきやすいポイントを中心に、短く整理して共有しました。

  • 薬は「誰にでも同じ」ではない(体調・年齢・状況で変わる)

  • 量を自己判断で増やしたり減らしたりしない

  • 家族を含む“他人の薬”は使わない

  • 飲み方・飲み物の選び方で影響が変わることがある

■ ドーピング妖怪の活用(講話・動画パート)

今回の教育プログラムでは、講話パートの各所でドーピング妖怪を活用しました。スポーツ×薬学というテーマを、子どもたちにとってより入りやすい形にするため、エンタメの要素を教材側に組み込んでいます。

また、プログラムの中には、インドネシア語対応としたドーピング妖怪によるオーバードーズ啓発動画も取り入れました。言葉の壁や理解の壁がある環境でも、アニメ動画であれば情報が届きやすく、内容の入口を作りやすいと考えたためです。

実際に、子どもたちの反応は非常に良好で、映像をきっかけに表情や反応が一段変わり、その後の講話・体験パートへの集中にもつながりました。

ドーピング妖怪は、単なるキャラクター教材に留めるのではなく、日本発の「スポーツと医薬品適正使用」をつなぐ架け橋となるIPとして育てていくことを目指しています。

② 実験(目で見て理解する)

実験は言葉の壁がある場面でも強いです。変化を目で見て納得できるので、理解のスピードが上がります。
今回は《カプセルの性質》《飲み物と薬の関係》《錠剤の変化(発泡等)》など、体験を通じて理解できる内容を中心に実施しました。

③ DG(ドーピングガーディアン)体験

DGは正解を当てる教材ではなく、状況の中で判断し、その理由を言葉にする時間を作るためのゲームです。
カードを囲むと会話が生まれます。言葉が完璧でなくてもやり取りが立ち上がり、薬や健康の話が“自分の判断”の問題として動き出します。

④ 振り返り

最後に授業の要点を短い言葉で整理し、日常生活の場面に戻してまとめました。
「知った」で終わらせず、次に同じ場面が来たときにどうするかまで落とすことを意識しています。


■ 言葉の壁:難しさと達成感

海外で授業をやると、言葉が通じないことの難しさを毎回思い知らされます。通訳を介してもニュアンスは落ちますし、こちらが意図している注意点がそのまま伝わらないこともあります。
だからこそ、今回の授業は“体験”を中心に置きました。実験で変化が起きた瞬間に伝わることがある。DGを囲むと、言葉が完璧じゃなくても会話が回り始める。
授業が終わったあとに子どもたちが笑顔で寄ってきてくれる。その時の達成感は、現地でしか得られません。


■ 教育効果の検証(プレテスト/ポストテスト)

授業の前後でプレテスト/ポストテストを実施し、理解度の変化を指標として教育効果を検証しています。
結果の整理・集計・分析(評価)は静岡県立大学薬学部が担当し、得られた知見は教材・進行・表現の改善に反映します。分析結果については、整理でき次第、別途まとめて共有します。


■ PMI訪問(災害部門の見学・意見交換)

今回、PMI Provinsi Bali(インドネシア赤十字)を訪問し、災害部門の現状について説明を受け、見学と意見交換を行いました。

この訪問は、お薬教室そのものの実施とは別枠の内容になりますが、私自身が静岡県災害薬事コーディネーターとして活動しており、これまで災害支援に関わってきた経験があるため、現地の災害対応体制や運用の実際について学ぶ機会として設定しました。

現地では、災害時にどのような資機材が整備されているか、運用上どんな課題があるか、平時からどのように備えているかなどについて、具体的な説明を受けました。日本から提供された資機材が含まれている場面もあり、現地の方々が「助かっている」と話されていたことは印象的でした。

教育事業の実施と並行して、地域の安全・健康を支える仕組みを現場で確認できたことは、個人的にも大きな学びになりました。


■ 在デンパサール日本国総領事館での事業報告

1月22日、在デンパサール日本国総領事館にて総領事と面会し、事業報告と意見交換を行いました。

報告では、令和7年度SFTアクションプラス(第二期)採択事業としての位置づけ、学校2校での実施内容(講話+実験+DG体験)、プレテスト/ポストテストによる効果検証(評価:静岡県立大学薬学部)などを中心に共有しました。
意見交換を通じて、今後の展開を考えるうえでの視点も得ることができました。


■ 関係者の皆さまへ(謝辞)

今回の事業の実施にあたり、ご協力いただいた皆さまに心より感謝申し上げます。
受け入れてくださった学校関係者の皆さま、現地で連携いただいた皆さま、PMI Provinsi Baliの皆さま、在デンパサール日本国総領事館の皆さまに、あらためて御礼申し上げます。

また、静岡県立大学薬学部の先生方、そして現地で一緒に動いてくれた薬学生の皆さんにも感謝します。準備から運営まで、ひとつひとつの積み重ねが今回の実施につながりました。

現地では、ドーピング0会のスポーツファーマシストの皆さまにも活動を支えていただきました。実施の場面でのサポートはもちろん、現場での細かな判断や対応も含め、大きな力になりました。

開催までの国内側の調整では、大阪産業大学の谷本さんに多くの場面で支えていただきました。事業の進行を前に進めるうえで欠かせない存在でした。
そして現地での運営・調整においては、PT.Rita Partners Indonesiaの富本さんにコーディネートいただき、実施を形にすることができました。現地側との調整を含め、本当にありがとうございました。

関わってくださったすべての方々のお力添えがあって、今回の取り組みを形にすることができました。


■ クラウドファンディングで支えてくださった皆さまへ

今回の挑戦は、クラウドファンディングで応援してくださった皆さまの存在があって前に進めることができました。心より感謝申し上げます。
いただいたご支援は、現地での実施や教材準備、運営のための大きな力になっています。

現地で子どもたちが前のめりに参加してくれたこと、言葉の壁がある中でも学びの場を成立させられたこと、その一つひとつが、支援者の皆さまと一緒に作った成果だと感じています。
引き続き、活動の経過や成果はできるだけわかりやすい形で共有していきます。


■ 今後に向けて

今回の実施で得られた所見は、国内で継続している実証にもフィードバックし、教育プログラムとしての精度をさらに上げていきます。
プレテスト/ポストテストの結果(評価:静岡県立大学薬学部)も踏まえながら、再現性のある形に整備し、現場で使える教材として磨き込んでいく予定です。

そして、ドーピング妖怪をはじめとした教材も含め、スポーツと医薬品適正使用をつなぐ取り組みを、日本発のモデルとして育てていければと思います。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

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